Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

ちょちょら 畠中恵

ちょちょら (新潮文庫)
ちょちょら (新潮文庫)
新潮社
2013-08-28

題名の「ちょちょら」とは

弁の立つお調子者。いい加減なお世辞。調子のいい言葉


とあります。
出だしが軽く、この題名の意味からも「イマイチの内容かなあ…」と
このまま読み進めてもいいのかなあ…と出足が鈍いのですが、
そこを通過すると一気に加速!!!!


最近目にする時代小説は武士なら浪人、長屋住まいでグダグダと謎解き、
もしくは勢いのいい長屋住まいの町人の人情ものが多い気がする。
(猫が小道具になるのは必須)
本作はあくまでも城内で一生懸命(?)働く苦労話と言うより
もうはっきり言ってサラリーマン武士。
「官僚」の苦労話と言うか、一般企業で「接待」に苦労している話と言うか。
もしくは新入社員が倒産しかけている社運を背負って一人奔走!
他社の老狸の知恵&微妙な友情(笑)などを借りていかに倒産させずに切り抜けるか!!
時代小説ゆえ運悪ければ「切腹」と紙一重の状態で次々襲いかかる
難問を知恵と勇気(?)をあらん限り総動員して回避する様は
もう手に汗握ります。笑


聖句に「いつも自分の事ばかりでなく他人の事も考えなさい」と言うものがありますが、
その言葉はビジネスにおいては非常に難しいと言わざるを得ないと思うし、
自分の事がクリアできたら後は知らないという態度がホントああ人間って
汚いな、と。
「自分さえ良かったらそれでいいの?!」と腹立ちます。


一方切ない設定としては見目麗しく優秀だった兄が、
そのお役に付いたものの「切腹」。
生き残ったのが私ではなく兄上だったら…と兄上には絶対に勝てない…と
常に心に優秀な兄が住んでおり、本人には本人の「美点」があるにも関わらず
そのことに気が付いておらず卑下しているところが悲しい。
それは、やっぱり他の兄弟に紛れて悲しい思いをしている人ならわが身の様に
辛く感じるはず。
(私も、その立場だった。今は夫が一人の人間として価値を認めてくれているから
昼行燈から自分の気持ちをハッキリ言える人間に変わることができたのだけれど)
密かに思っていた兄のいいなずけの事も絡み、「もうや~~めた」とは
絶対に言えない立場になりながらもそれでも一生懸命打開策を探す姿を
見る人は見ているのが救いだけれど、
それでもラストは個人的にちょっと悲しい…


「倍返しだ!」で有名になった小説のようなビジネス系がお好きな方、
奮闘記がお好きな方にはお勧め。
私的には100冊読んでやっと1冊ヒット!の一冊に相当する本!
お勧めです!!


題名がイマイチというか主人公の良さが「軽く」感じられるので
不満です。(逆説を採用したのかもしれないけど…)