Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

ドント・ストップ・ザ・ダンス 柴田よしき

ドント・ストップ・ザ・ダンス (講談社文庫)
ドント・ストップ・ザ・ダンス (講談社文庫)
講談社
2016-08-11

花咲慎一郎シリーズ5作目だそうです。
(4作品しか読んだ記憶が…あれ????)


花ちゃんの経営する「にこにこ園」の園児の母親が失踪。
元人気作家の父親と息子の即席父子家庭を気に掛けつつ
過ごしていたら、父親がいきなり金属バットで殴られ
意識不明の重体に。
「母親を探し出さねば!!!」と焦っている花ちゃんに「私立探偵」
として持ち込まれたのは「人気パティシエの素性を探ってくれ」。
「何だ楽勝…」と思いきや彼には3人の殺人容疑が…
しかも堀の中からヒットマン要請までかかっているという…
「まじ、やべ~」と手を引こうかと逡巡しているうちに
なんと花ちゃん、駅のホームから突き落とされ電車が目前に迫る…


と今回もボロボロになりながらの身体を張っての大仕事。
作者の柴田さんが女性なので主人公を男性にすることで
少し距離を置いた「女性の立場」を理解することができます。
これが女性を主人公に据えていたらなんかきっと重たくて、
うっとうしい小説になると思います。笑
むしろ「俺は子供が産めないからよくわからないが…」と
言う立場でありつつもそれ以上に
「俺が諦めたら、子どもたちの行く場所が無くなる!!!」
と言うその一念でハードな仕事をこなしている姿に
今や死語と言っていい「一家の大黒柱」の姿が浮かんできます。
この「何が何でも俺が家族を守る!!!」的な要素が今の時代、
ホント希少だと思う。
この「父性」の塊のような人が、大人の犠牲になるのはいつも「こども」
と言うことがわかっているから必死になる姿が読んでいてあったかい
気持ちになる。
男性作家がこのような探偵ストーリを書くとハードボイルド、
男の美学的なものに走ってしまって時代に合わない気がするし。
そういった意味では女性の柴田さんが書くハードボイルドは
視点が違っていて密かな社会派小説なんだと思っている。


p549

踊り続けよう。


それがたぶん、生きるってことなんだし、な。