Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

天山の巫女ソニン巨山外伝 予言の娘 菅野雪虫

天山の巫女ソニン 巨山外伝 予言の娘
天山の巫女ソニン 巨山外伝 予言の娘
講談社

他国王女の生い立ち編
この本が一番自分にとっては「すとん」と来る話だった。
と言うか、モロ「児童文学」の基本と言うべき「親子関係」や
「友人」といった要素満載。
特に親子関係で言えば他国王子とは違って正室の子どもでありながら
待ち望まれていたのは「男子」。
女で生まれたことによる「要らない子」認定。
それも両親からとなるとキツイ、キツイ。
何も期待されず、何も心配されず、無関心を貫かれる子ども…
そんな歪んだ親子関係の末に王女が下した「こんな親、要らない」認定。
p43

「これではっきりした」

大人びた低い声に、乳母はどきりとしました。

「姫様?」

「母がすることを無駄だと思いながら、

私も無駄な事をしてきたものだ。

治らぬ病に合わない薬を飲み続ける様に、

私も決して報われることの無い人間に、振り向かれようとしてきた。

だが。もう決めた。

そんな無駄な事はしないぞ。これからは!」

振り向いたイェラの顔を見た乳母は、

(ああ…)と思わず心の中でつぶやきました。

それは親を弔った(とむらった)子どもの顔でした。

もうこの世にはいない者だと自分を納得させた者の顔でした。




親に愛されて育った人にはイマイチピンとこない描写でしょうが、
親を弔った経験のある人間には「かさぶた」をはがす感覚の描写。
私も弔った側なので。



人間関係の基本である親子関係で躓いたらその後の人生、
やっぱりなんらかの「心理的な障害」があると自分は思ってます。



他国王子にしろ他国王女にしろ世間的には「良い家柄」の子どもたちなのに
抱えた暗く淋しい感情を持ちつつも、ソニンと言うおっとりしているようで
聡明な娘に出会ったことにより二人ともそれぞれに人間らしさを取り戻し、
優しさ知る「再生」の話としてどちらもよかったです。


小学生までの子どもが親から受ける理不尽な仕打ちってパワハラの中でも
最強最悪最低の部類になるんじゃないのかな?
そんな何十年も前に受けた「傷」がぱかっと開いちゃったよ。