Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

終わった人 内館牧子

終わった人 (講談社文庫)
終わった人 (講談社文庫)
講談社
2018-03-15

この本も結構予約して待った本。
けれど自分自身が「離婚」について考えている時に
丁度届いたこともあって
「必要な物はやっぱりナイスなタイミングにやってくる」
と実感中!
あまり自分からじたばたして動くより、流れに身を任せた方が
結果的には良い事の方が私の場合は多い気がする。


さて、主人公。東大法学部卒、メガバンクの出世街道を
歩いていたのにはしごを外され子会社に出向、再雇用の話を
蹴って退職。しかし退職後にすることが無く、図書館&散歩は
老人がすること!と決めつけて拒否。
スポーツクラブの見学に行けばジジババばかりで自分はそんな
年寄りでもないしあんな会話に参加したくない!!と
どこまでもプライドが高い態度に読んでいてイラっとするのですが
判らなくもなく。仕事一筋に来ていた人ってやっぱり
「自分は只者ではない!」と思いたいらしい。
私の嫌いなちょっとしたことでクラクションを鳴らしまくる
シルバーグレーのセダンで助手席にババアを乗せている
ジジイと言うものは大方こんな人種なのでは?と思ったり。
「俺様!」な性格の人は後々しんどいだろうなあ…と。
私の夫も定年までカウントダウン入っているので余計に
「変なプライドよりも再就職の口があったら引き受けてね!
家に居られるのと私が困るから!!!」と読んでいる間も夫に
強い口調で激しく「お願いする」。笑
離婚したい病にかかっている期間中もこの夫の退職後に
「一緒に家に居る時間」が長ければ長いほど私のストレスも
増加するだろうから、ここは嫌でも一緒にいる時間を少なくするために
何かパートに出た方がいいかな、とモヤモヤ。
でも、もうこの年でやりたい仕事が見つかるわけがないし…
といって、焦って適当に仕事を決めたら過去の二の舞三の舞で
メンタルをやられるのももうこりごりだし…と絶賛モヤモヤ中。
因みに本書の嫁は43歳の時にヘアメイクの専門学校に入学、
その後サロンに勤めなんと60歳を前に独立すると宣言する展開。
やっぱりこんな風に「独立」を視野に入れて活動した方が
良かったのか…と絶賛後悔中の私…


p172

「私ね。老夫婦が貧しい食卓で向かい合う毎日って、

決して良い事とは思えないから。そんな毎日じゃ、

『お互いに年取ったよな』位しか考えないでしょ。

年齢ばかり考えてることが、人を年取らせるのよ。」

と、カンパリを飲み干した。

「もちろん、こんなこと誰にも言えないわよ。

言ったらが必ず、そういう老夫婦の食卓こそが愛情だとか、

長年連れ添った幸せも理解できないのかとか言われるし。

挙句、外で食べたり、遊んだりするには、経済力と健康が必要で、

それが無い人の事を何もわかってないとかね」

確かに、千草のこのいい分には、ムッと来る人が少なくは無いだろう。

だが、経済力と健康が許す範囲で、あるいは許す工夫をして、

見飽きた老伴侶と別行動を取ることは、

結局は互いの為になるかもしれない。



と言うわけでその後色々トラブルがありまして、9千万もの負債を
肩代わりした結果、奥さんに嫌がられ会話も無い食卓というか
家庭そのものが崩壊しつつある中で二人が出した結果が
p511

「卒婚(そつこん)」

「卒婚?なんだそれ」

「店のお客さんに聞いたの。最近すごく多いって。

そのお客さんも卒婚したんだけど、結婚を卒業すること」

「離婚と同じだろ」

「じゃないの。離婚は不仲の夫婦が籍を抜く方法よ。

でも、卒婚は籍を抜かずに、

お互いの自分の人生を生きるために、同居の形を解消するの」

「…俺たちは不仲じゃないと思っていいのか」

千草は表情を変えずに言い切った。

「不仲よ。私も許していないし、あなたも私にうんざりしている。

でも、お互い、離婚には行きつけないでいる」

一緒にいても楽しくない、会話も無い…もう、いいよね…
でも「離婚」までには踏み切れない。
そうお互いに思っているなら「卒婚」とはなんと便利な言葉だろう!!
ああそうか。それもありだな、とか色々思いました。
そしてやっぱりなんというか女性の方が強い生き物なんだな、とも。
読み手の年齢、環境、性別、それによってかなり感想が変わると思うけれど
私はホントこのタイミングで読めてよかったな、と思った一冊。