Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

鴨川貴族邸宅の茶飯事 範乃秋晴

鴨川貴族邸宅の茶飯事 恋する乙女、先斗町通二条上ル (メディアワークス文庫)
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副題として「恋する乙女、先斗町通二条上ル」とあります。



さて本作。執事喫茶かホスト喫茶を舞台にお嬢さまの謎解きでも京都を舞台にやるのかな?と思っていたのですが何と言いますか全く話の方向性が見えず「一体これは何のジャンル?????」というか「漫画?」みたいな感じで。しかも冒頭部分の設定に「突っ込みどころあり過ぎ!!」という…何これ。ラノベでもなんか今迄にないタイプ。
漫画で例えると『俺物語』

俺物語!! 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
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みたいに「一冊の中で2種類の異なる話(絵)が入っている」感じ。
まあ、なんと言いますか「真面目に書いているのか笑わすために書いているのか…」と
コロナで憂鬱な顔をしているよりは笑う話の方がいいのでその点は評価できるかと。


で、恒例の「突っ込み&それ、変でしょう!」を。
冒頭に嫌味満載で架空の場所とはいえ周辺と思われる地図を貼りました。


p5

その場所は市内を流れる一級河川、鴨川の上流に位置しています。

そこは十数万坪もの広大な庭園で、四季折々の草花が作り出す道を…(中略)

あたり一帯を青く染め上げる鮮やかな湖面をご覧になれるでしょう。


鴨川の上流は下賀茂神社を境に「賀茂川」と「高野川」に分離して名称が変わります。
先斗町あたりを上流っていうの?
先斗町周辺で十数万坪って…どんだけお金持ちよ?!さらに「湖面」って…
琵琶湖に面した場所をイメージしているのか??と冒頭から混乱。
まあ、フィクション、想像で書いてあるといえばそれまでなんですがそれだったらなぜ
それっぽい地名を出すのよ?!と文句の一つや二つ言いたくなるので書いてます。笑


p6

内装から外装、庭園、門に至るまでそのすべてが英国貴族の邸宅を再現している。

(中略)

扉をくぐった先のエントランスホールには円柱が並び、格子の付いた高窓に招かれた陽光が白と黒で彩られた大理石の床に降り注いでいる。見上げれば美麗な天使たちを描いた天井画が一面に広がっており、もはや溜息しか出てこない。

京都のあの蒸し暑い場所でイギリスの庭園の再現。花期が短すぎて花を楽しむには一番不適切な土地柄だと思うのは私だけでしょうか?
英国貴族の邸宅…もとは城というより城塞ですよね。石作りの。
天井に天使…それ「サイゼリ×」にあるようにイタリアルネッサンスではないでしょうか?城の天井に天使を描いている暇なんてないでしょう。むしろ肖像画や歴史を記したタペストリーが飾られれているのが一般的(と、ロマンス小説で学習している)だと思われるのですが。自分の離婚の為に「英国国教会」を作ってしまうようなお国柄ですよ?
奥さんを何人も殺して。百歩譲って天井画があるとしたら教会ですが、貴族にはマイ教会が敷地内にあるのもお約束。イタリア・フランスと混合してませんか?


何というか想像だけで書いてある感じ。しかも貧弱な今どきの「英国風イメージ」をぶち込んであり規模がウサギ小屋発想から抜け切れていない。英国貴族邸宅ではなく異人館=商人の家をイメージしているとしか思えないんですけどね。
でもまあ何と言いますかわかりやすい夢見がちの少女趣味の舞台装置としては仕方ないのかもしれませんが。(アニメで表現するなら非常にそれっぽい描写になると思う)


p114

彼女は滝壺から続く川の中へ飛び込んだ。浅瀬の為に足はつくが、飛び散った水しぶきのせいで…(中略)

晴(注:執事の一人)が川底をけり、頭から水の中へ潜った。(中略)

見事なまでのドルフィンキック。そこから平泳ぎに移行しては必死に逃げる…



先斗町周辺の川に飛び込むって…自殺行為だよね…
しかも頭から飛び込めてさらにドルフィンキックできるだけの水深のある場所って
一体ドコ??またドルフィンキックをしたのならクロールが自然じゃないですか?びしっとした燕尾服を着たイケメンが平泳ぎ…無いわ…


まあどこまで「ギャグ」をこの作者が狙っているのかわかりませんが…
今回言えることは京都が舞台である必要性が全く感じられません