紙コップのオリオン 市川朔久子
- 紙コップのオリオン
- 講談社
- 本
すっかりこの作家さんを気に入ったので図書館の再開を期にちゃんと「本」で借りました。
まず主人公、中学2年男子。両親&小2の妹の4人暮らし。なのにいきなり帰宅したら
お母さんが「自分探しの旅」へ…
正直、私の年齢でこの設定に対してどうしても「せめて子供が高校生になるまで待てなかったのか…」と共感できません。あとで徐々に理由が明らかになるとはいえやっぱり
親目線で読んでしまうので主人公のお母さんと同じ心境で読み進めるにはかなり抵抗がありました。
そんな母親不在のかなり自由の利かなくなった(家事が負担に…)中で
ひょんなことから「創立20周年記念行事実行委員」をもやる羽目に…
「え~~~~~~~!!」の連続の中、たくましく成長していきます…と簡単に書いてしまうと申し訳ない感じ。大人の小説は大人二人だけのある意味自己中心的な状況でずんずん話が展開していく事が多いけれど児童文学は大人の都合に振り回される気の毒な子供が多い…汗 ごめんね、って感じ。
ところで本作、今どきの作品だけに子供の名前が微妙にキラキラネームです。
逆にそれが別の意味を含んでいます。(こういうとこが上手いな!と思う)
まず主人公男子=論理(ろんり)
主人公の友人男子=元気(げんき)
そしてヒロイン=白(ましろ)
この「ましろ」ちゃんの名前の由来の説明が深いです。
p158
水原の話によれば、名前を付けたのはお母さんで、生まれた日の朝、
新雪がきれいだったかららしい。
「_でね、これはお母さんが教えてくれたんだけど」
小さい頃から、友達との距離感に悩むたびにお母さんが助言してくれたのだという。
「水原さん、とか、ましろちゃん、とかごく普通に苗字や名前で呼んでくる人は、まあ、味方か、少なくとも敵じゃない人たち。
でも、あんまり仲がいいわけでもないのにシロとかシロちゃんとか呼んでくる人がいたら、たとえニコニコ笑っていたとしても注意しなさい、人の名前を軽んじる人は、人の事を大切になんかできない、って」
うあ~ましろちゃんのお母さん、鋭すぎ~って思いましたよ。
さらにこれには続きがあります。(上記の時は教えてくれなかった)
p220
「前に言ってた、水原の名前の呼び方の話。こういう呼び方をすれば敵とか味方とか、ってやつ。あれ、もう一つあるって言ってただろ。なに?」
「あれは…いいよ、もう」(中略)
「お母さんが教えてくれたのは、あと一つ。
……もし『白(ましろ)』って呼ばれて、その人の声の後ろに、降りたての雪の白さが感じられたら」
そこで息を吸う。
「__それは、あなたの事をとても大切に思っている人よ、って」
もう「ヒューヒュー」じゃありませんか!!!!
で、主人公の行動は果たして!!!!って感じなので後はお読みください。笑
もう一つ慣れない家事と記念行事に四苦八苦している時に妹と一緒に発熱してしまいます。お父さんは大事な出張を取りやめて家に居ようとしますが主人公が「行けってば!!」と反抗します。そこで長年没交渉になっていた父の姉がピンチヒッターとして
看病に来てくれた時のこと。
p193
「でもね、論理」
僕の言葉をさえぎって言う。
「迷惑かけずに存在できるものなんか、どこにもないのよ」
みのりさんはカタリと箸を置くと、七味の蓋を取ってものすごい勢いでうどんに振りかけ始めた。
「素直に『助けて』って言える人間の方が、本当は強いの」
この意味が分かるのってかなりの大人じゃないと無理なんじゃないかな?
この作家さんの作品は一応児童文学なのにどう考えても大人が読む方が色々考えさせられる。
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