Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

ペコロスの母の忘れもの 岡野雄一

ペコロスの母の忘れ物
ペコロスの母の忘れ物
朝日新聞出版

この巻に至ってはお母さんはあくまでも著者が思い出して描いている状態なので
本当はどうだったんだろう…という感じ。いわばメルヘン入っている状態。


むしろエッセイの方が真実味がある。
p54

「一緒に死んでくれ」と包丁を持って母を追い回す父を羽交い絞めにした時、自分の中に父の狂気が流れ込んでくるような恐怖を感じ、他の理由もあったのだが故郷を捨てて上京した。母を捨てて、と言った方が合ってるか。

そして東京で悪夢にうなされて寝汗をかいて目を覚ます時、大体が母を包丁で刺されるパターンだった。

実はもうひとパターン。包丁を取り上げて僕が父をさすという夢。

「死ねば良かとに」と泣き喚きながら。

(中略)

父亡き後認知症を発症して段々ズンダレて(=だらしなくなっていく)行く母と暮らしていて、トイレから出てきた母が口の端にウンコを付けて出てきた時トイレを覗くと流してないし、側面のタイルにはウンコがこすりつけられていた。

(中略)

「ゆういち、どげんしたとや?」。そこには泣きそうな顔の童女が立ちすくんでいた。

酔いどれの父にたたかれてもたたかれても、包丁で追いかけられても、一生懸命家を守り子供を育ててきた母がなんでこんなに。

「なんでこんげん」と母に向かって吐き捨てる様に言って口をつぐみ、心の中で

「こげんなるまで生きとかんちゃ、死ねば良かとに」。

それは、一度ならずその後もつぶやいたであろう言葉、気持ちである。

後に思えばそれは母本人が一番痛切に感じていた気持ちである。

段々おかしくなっていく自分の頭に戸惑い、恐れおののいていただろう。




実家父はいわば「まだらぼけ」なのでいまだに「自我がはっきりしている」が為、
本人以外の意思で強硬な手段に出れない…というのがネック。
完全にわからない状態になってくれた方が介護者にとっては扱いやすい。
ただしこれは元々の気質が「暴力を振るう」人間だからかもしれないが。
私も父親を殴る夢、よく見ます。
言い換えると「父親を殺したくて仕方がない」「父親の存在をなかったことにしたい」
という願望の現れ。