Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

本屋さんで本当にあった心温まる物語 川上徹也

本屋さんで本当にあった心温まる物語
本屋さんで本当にあった心温まる物語
あさ出版

個人的にはこんな「企画本」というか「泣かせてやるぞ!」系は嫌いなのですが
ついつい手に取ってしまいました。
個人の本屋さんがどんどん廃業していく中、どうすれば本屋が生き残れるか…という
経営本でもありました。
ただ売るだけではない。人と人を繋ぐ場所。ある人の人生の転機になるきっかけがあった場所。将来を決める出会いがあった場所…
ただ商品を売るだけではない+α…
小売りをしている限り「本」に限った事では無い。
ただ並べておけば良かった時代はとっくに終わり「この本屋でなければ(この店でなければ)」という「魅力」を打ち出して人を惹きつけるか。
その営業努力の裏に「本が好き!(うちの商品が好き!)」な店員の大いなる影の力も重要!


エピソードの中で東日本大震災で大きな打撃を受けた仙台の小さな出版社。
このままでは倒産する…という危機に陥り、わらにもすがる思いで大震災を経験した神戸の人なら…と大して親しくも無かった老舗のK書店さんに電話した結果、多くを語らないうちに売り場責任者さんのHさんが「責任をもって売ります!」と受け合ってくれた。
そして掲げられたPOPには


「激励の言葉より本を売る」



その言葉に心意気を感じた人々が本を買いに行ったのは言うまでもない…



と、ここまでが本書に掲載されていたことですが震災が起こったのが2011年。
この本が出版されたのが2012年。
そして老舗のK書店こと、神戸元町海文堂書店が閉店したのが2013年の事でした…
本文中には仮名しか書かれていませんでしたが、文末の協力してくれた書店の一覧表に
海文堂書店の名を見つけた時「ああ、ここの事だったのか…」と思い出した次第。
あの老舗すら閉店するのか…と新聞で知った時はショックでした…涙



東北の本を引き取る時には既に経済状況は悪化していたと思う。
それでも「今、自分ができる精一杯の事をする」と考えたら
即座に「お引き受けしましょう!」という言葉になったのだと思う。
2011年までには確かにあった「人を思いやる心」。
しかし2020年の今、コロナで「自分が良ければそれでよい」という
考え方に侵食されてきている気がしてならない。