Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

何度でも君に温かいココアを 小瀬木麻美




何度でも君に温かいココアを
何度でも君に温かいココアを
著者:小瀬木 麻美
出版社:ポプラ社
発売日:2013-05-01
カテゴリー:本

ものすごいシンクロ率!と思いながらの読んだ一冊。
と言うのも、この本を選んだのは書棚で何気に題名に惹かれただけで内容とかイマイチ吟味せずのセレクト。
巻末の作者の紹介に「京都府生まれ」とのこと。
最近まで読んでいた鏑木蓮さんも京都出身!
と言うことで本作も京都の地名がたくさん出てきました。(鏑木さんはどちらかと言えば嵐山方面から北野天満宮までの左側の描写が多かったのに対して、こちらは清水と言った右側の描写が多かった)
そして何より、読後感最悪というか読んだと色々と考えてしまった宮部みゆきの『ペテロの葬列』の衝撃のラストの菜穂子の告白にもあったように「自分は自立しなければならない」的なことがこちらにも。
それは笑うことを止めた母の過去を捜すための母の出身の京都に旅した娘にかけた言葉。


『私があの人に凭れすぎたせいかもしれないわね。

そのせいであの人はどこでどれほどの間私の手を放していいのか、わからなくなってしまったのよ。

でも、倫子のおかげで私は自分の足だけで歩くことの大切さを思い出したの。

思えばあの街を出る時、佐生に偶然出会って、あの時から、私は、自分の足だけで歩くことを放棄してしまったのね。いつも佐生に支えられて、それに慣れすぎてしまったの』



菜穂子と倫子の母の由希の言っていることはほぼ同じなのに、ラストは全く違う。
新たに得た家族を愛し、ともに一緒に暮らしていくことを誓っている。


似たような夫婦の葛藤なのにどうもこうテイストが違うのか。
とはいえ、作品はデビュー作と言うことも割り引いても文章は美味いがイマイチ「大人向け」ではなかった。中学生の娘の奮闘記でもあるのでむしろターゲットを下げて中高生向きにした方が良かったかも。
帯に『ほろりと泣ける感動の物語』とあるけどそこは悲しき年の功、泣くほどのものでもなく。
むしろ中途半端な話だったなあ…と興ざめの方が大きかった。
プロローグの文章が大人っぽっく謎に満ちていたのに、全体的にありきたりになったのは残念。