ゼロ!おぎゃんかわ以下動物がなぜ死なねばならんと? 片野ゆか
能天気な内容をイメージする表紙のイラストとは真逆の本当に重たい、
読み進めるのが苦痛な位辛い一冊だった。
動物の殺処分。
この現実を知っている人がどれだけいるのだろう?
長いですが、ある職員が初めて殺処分をする場面を引用します。
p10~
職員がスイッチを押すと、動物管理棟の中に自動制御装置のモーター音が響きだした。
しかし、機械が対応するのは犬舎の奥にある通路部分だけ。
収容スペースから通路へ犬たちを移動させるのは、
職員が手作業で壁を押して行わなければならない。
これを”手追い”と呼ぶ。(中略)
バムッ!
これはこの世とあの世を分ける音だ。
制御室のコントロールパネルの赤いボタンが押されると、
ステンレスの箱の中に炭酸ガスが注入された。
扉の前で職員が手を合わせる。
箱の中からは、犬たちの吠え声やヒンヒンと言う鼻笛が聞こえてくる。
しかし、それも数分で乾いた爪音に変わる。
カリカリ、カリカリ、カリカリ…
犬たちがステンレスの床をひっかく音が動物管理棟の中に響き渡る。
注入開始から5分。最高濃度になった炭酸ガスは、犬たちを窒息死へと導いていく。
ステンレスの箱の中からは時折、バタバタッ、ゴトンという鈍い音が聞こえてくる。
息苦しさに耐えられなくなった犬たちが倒れ、壁や床に体を打ちつけているのだ。
動物管理棟にやがて無音の世界が訪れた。
このように、現在メインで行われているガスによる殺処分。
これらが行われる前は以下の手順で殺処分が行われた。
p59~
『1960年代末当時、動物行政の現場には現在のようなガス処分機は導入されていなかった。予算もほとんどない。
狭い犬舎の中に押し込められた犬たちのフード代さえ支給されず、
そして殺処分はもっと経費のかからに方法が選ばれた。
それは 撲殺 だった。
この仕事に就いて、湯田は初めて分かったことがあった。
テレビドラマの殺人シーンは、きっと現実とは程遠い。
あんな殴り方で、生き物は死なない。
画面を眺めながら、そんなことを考えてしまう自分が恐ろしかった。
そもそも、飼い主が飼いきれなくなってセンターに犬を持ち込むという事実。
自分の手では殺すのが嫌だから後は任せた!みたいな気楽な気持ちで連れてくる人が
現実に居るんだ…と読みながら信じられない気持ち。
今の今まで「家族」として一緒に暮らしてきたのに…
野犬、野良犬と言った凶暴な犬だから、人に危害を加えるから…と言った理由ではなく
ただ「要らなくなったから」と言う残酷かつ身勝手な理由で連れてこられる犬たち。
または、ペットを飼っていて迷子になったときにどうして探さないのか前から
不思議だったが、理由も書いてあった。
p34
熊本市動物管理センターで捕獲される犬のうち、野良犬は少数派で、
ほとんどは飼い犬だ。しかし飼い主の元に戻れるのは全体の一割程度しかいなかった。
飼い主は愛犬の事が心配ではないのか。
なぜ捜そうとしないのだろう?松崎は不思議で仕方なかったが、仕事をするにつれて状況が少しづつわかってきた。その理由は、主に三つあった。
ひとつは飼い主が迷子になったことに気が付いていないケースだ。
数日前から姿が見えないが、その内帰ってくるだろう。そう考えているうちに一か月近く経ち、行政に問い合わせをした時にはすでに手遅れ。あるいは飼い主がそれを知ることも無く犬が処分されてしまうことも少なくない。
また探し方を知らなかったという人も多い。
犬や猫がいなくなったとき、すぐに市役所と保健所、警察に問い合わせをすれば手がかりが得られたはずなのに、それを知らない為に救えないパターンだ。
もう一つは保険所などに問い合わせをしているのに探し出せないパターンだ。
舞台は「熊本市動物愛護センター」。
先の地震でこれらの施設に大きな被害が無いことを祈ります。
【熊本地震による被害状況】サイトマップ | 熊本市動物愛護センター - ハローアニマルくまもと市← やっぱり被害があったようです…
そして何より、無知、無責任の飼い主のよって小さな命が奪われることが無い国になって欲しいと心から願います。
行政が、個人がどんなに頑張って保護して譲渡しても捨てる人間がいる限り、
この負のループが断ち切られることは無い。
まずは「ペットを飼うということは、その命を預かること」と言う基本をもっと
指導する方向にもっていかないと改善は望めない気がする。
ペットショップに行く前にこのような譲渡会場にどんどん足を運ぶように
して欲しい。そして「運命の出会い」がたくさんあることを望む。
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