Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

動物翻訳家 片野ゆか

動物翻訳家 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー
動物翻訳家 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー
集英社

片野さんの本は「殺処分」や「愛護」と言ったものばかりだったので
正直読むのが苦痛でしたが、こちらは「死」とは少し距離のある
動物園の動物と飼育員の関係の話。
そう言われたら最近の動物園はただ見せるだけからより自然に近い
生態を見せる展示に代わって言っているなあ…と。
まあ、ぶっちゃけただ展示していれば珍しさから集客できた時代は終わり、
より興味を持ってリピしてもらえる経営努力を常にしなければならない時代
になったということに加えて、ワシントン条約で動物の輸入が禁止され
国内産ブリードを成功させてレンタルもしくは交換といった形で
何とかして種を残す努力も必要になってきてるので、
動物にストレスを与えることなく、
自然な形で長生きしてもらわなければならいと言う裏事情もあるけど。


本書で登場するのは
ペンギン…埼玉県こども動物自然公園
チンパンジー…日立市かみね動物園
アフリカハゲコウ…秋吉台事前動物公園サファリランド
キリン…京都市動物園


飼育員さんは最大の愛情と神経を注いで担当動物を世話をする。
「野生動物」と言われても上記の理由で最近はほとんど「国内産ブリード」。
自然に返されたら生きられない。動物園産の生き物ばかり。
またはアイドルペットとして芸をしていた過去を持っていても、
何らかの理由でアイドルを引退。そこから自然な動物の群れに戻ることも
仲間に入れてもらうこともできない。
人間のエゴで動物本来の本能や仕草が出来なくなった哀れさが漂う。
人間でも幼いころから芸能活動をしていたら周りは大人ばかりなので
子ども本来の付き合いが出来なくなって、大人になっても自然な交流ができない…
的な事を聞くのと似ている。
種があるべき姿を幼い頃に奪うと人格形成に問題が生じる。
より自然に、より健やかに。


けれどこんなに神経を使って毎日を過ごしているのに、
エピローグにこんな飼育員の言葉が…

深い愛情を感じているし、信頼関係を築けていると思います。

でもフェンスも何もないところで、絶対に背中を向けることはできません。

(中略)

犬はいいです。ほろ酔いになろうが、そのまま眠ってしまおうが、

全く身の危険を感じないんですから。

同じ部屋にいて、あれほどリラックスできる動物は他に居ませんよ。

(中略)

「一緒の部屋でビールが飲めるところが素晴らしい。」と言う人に出会ったのは初めてで、この次元で犬と言う動物を語ることができる動物園の飼育員の仕事と言うものに、ただただ圧倒されるばかりでした。

切ないなあ…
確かに、ライオンと一緒の部屋にいて油断したら…ねえ…
翻訳家と言うより永遠の片思いの気がするんですけど…