Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

ドリームボックス 小林照幸

ドリームボックス―殺されてゆくペットたち
ドリームボックス―殺されてゆくペットたち
毎日新聞社

なんと皮肉な題名なんだろう。
ドリームボックスとは
「炭酸ガスドリーム装置=通称ドリームボックス」つまり
犬猫の殺処分の道具の事である。


「ドリーム」なんて言うふざけた言葉の裏には、その前は「毒殺」そして
野犬がメインだったころは木製バットでの「撲殺」に比べたらまだマシ…
との気持ちを込めての言葉なのかもしれないが。


片野さんの書いた『ゼロ!』とは違い、小説に仕上げている。
けれど、書かれているのは特定されないようにしたあくまでも
日本全国にある保険所や愛護センターの話をまとめたに過ぎない。
そして、これが書かれた当時まだ「くまもと」の成功はなかったので
生かすより殺すことがメインの活動内容が書かれている。
殺処分する獣医師の葛藤、どうしてもこの仕事が受け入れられずに
公務員獣医師を辞めて開業した獣医師の気持ちも盛り込まれている。
動物病院で安楽死を望む家族の意見に従って注射をするが、
やはり1時間は泣いている家族を前にやはり目が熱くなるのを
押さえきれないのだとか。
また、引き取りに来たものの飼い主から出た言葉は
「この犬より、あっちの犬が欲しい。飼ったことの無い犬種だから」と
飼い主に再会できて狂わんばかりに喜んでいる犬を前にしても
そんなことを言うバカ夫婦。しかも、犬は捨てやすい場所に
紐でくくられて放置されていたという。
一度ならずとも二度も飼い主に捨てられる犬。
救いがない。
読んでいて暗澹たる気持ちになり、自分の家にいるペットを前に
むなしさが募る。
救えない命がこれほどまでこの日本にいるのか…


飽きたから捨てる。
おもちゃ感覚でペットを飼う感覚。
どこかやっぱり日本と言う国はおかしくなっているのかも。
ペットショップで安易な気持ちで買うぐらいなら、
譲渡会に行って飼い主としての責任をかみしめて
一匹でもいいから助かって欲しい。
そう願わずにはいられない。