Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

猫泥棒と木曜日のキッチン 橋本紡

猫泥棒と木曜日のキッチン (新潮文庫)
猫泥棒と木曜日のキッチン (新潮文庫)
新潮社

題名と表紙の雰囲気からなんとなく「陽だまりでのんびり…」とか、
「午後のカフェタイム」と言った和やか系に感じられたのですが
なんのなんの結構重たい話でした。


主人公「みずき」は一人目の父親の病死、二人目の父親の家出、
そしてあろうことか実母の突然の失踪(家出)と言う事態に遭遇。
しかし母親のキャラから「なんとなくそうなると思っていた」とばかりに
そんなにあわてることなく日常生活を継続。
もちろん、警察に届けるなんて思いもしないしそれで不都合が生じるわけでもない
と言うところにすでにこの母子の関係が破たんしていたと思う。


そして、いつも通る交差点で子猫の轢死死体を見つけて箱に入れては
自宅の庭に埋葬するのが「儀式」というか「習慣」になりつつあるという
これまたどこか「壊れた感」のする行為にはしり、展開として
複数猫を飼っている女がいてそいつが不妊手術もせずに放し飼いしているので
子猫が生まれる→段ボールに詰めて捨てる→這い出た子猫が轢死…
と言い何とも言えない負の連鎖が生じていることに「怒り」を感じ
ある行動に出るのである。


先日まで読んでいた「殺処分」の元となる理解の無い飼い主による命の犠牲が
書かれている。とはいえ、これがメインテーマではなくどちらかと言えば
もう「親に期待していない子供の自立の話」であり「親捨て物語」でもある。
親がいなくても子供が高校生にもなればそれなりに生きていけるのである。
あっさり見捨てられた母親。悲惨な書き方、文体ではないのであまり深く考えずに
さらりと読めるのだが「こんな親、いらね~~」と思う親が最近増えているんだろうな。
自分の事しか考えない親。自分の恋愛に走って子供を置き去りにする母。
結局、男にまたもや逃げられて何も無かったかのように自宅に戻ってきた母に対して
なじることなく普通に受け入れる娘。
まるで一泊二日の旅行に行っていたかのような感じ。
でも、お金の都合さえつけば親なんて要らない、と思う子がいてもおかしくないな。


親と言う存在が「欠損」したまま育つと、こうもクールになってしまうのかな?
少し「心が壊れた」感がしないでもないと思った。