Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

キッチン戦争 樋口直哉

キッチン戦争
キッチン戦争
講談社

読み始めてすぐ「内容の割にひねりの無い題名だなあ…」と。
話としてはヒロインがフレンチの元祖みたいな祖父を持ちながら
一切の指導や料理のレシピその物の記憶が無く、短大を出て何年
専門学校に行ったのか不明ですがホテルに就職するももの
「見習いのまま」で個人店に引き抜かれ。
当然「技術的」にもかなり不安がある上に、オーナーの陰謀で
本人が作った料理ではないものでコンクール出場。
同僚君に「5ミリって言ったのに7ミリで切らないで!」と注意されるぐらい
おおざっぱな腕なのに大丈夫か?
普段の店でもヒロインが担当しているのはデザートと前菜。
これでコンクール?ほとんど同僚君が作ってるのに?と。
同僚君の性格がいいから成り立っているけど、現実では無理でしょう。
まあ、これで優勝したら「ありえね~」の展開ですが、さすがにそこまでは。
また、料理を通じて祖父の影を追う的な展開から『永遠の0』か?
そこから「戦争」と言うタイトルになったのか?と深読み。
ヒロインの性格がかなりのイマイチ。
もしかしてドラマ化を念頭に置いて書いたから今時の気が強いだけの、
演技力もくそも無い女優をイメージして書いたのか?と思うぐらい。
料理界は男がメインだからこれぐらい気が強くないと生き残れないという
意識があったのかもしれませんが、それ以上にこのヒロインの性格イマイチ。
何かイラっとするんだよね~素直さが無いというかなんというか。


で、致命的なことにこれだけ専門的に料理について書いている
(作者はフレンチ料理人だとか…)のにもかかわらず
読んでいて全く美味しそう、食べたいという気にならずむしろすっ飛ばしている
状態!
多分料理の作り手としてはプロかもしれないけど書き手としてはどうかと。
プロなのでどうしても描写が「現実的」になりすぎて、読者としてはイメージできない。
むしろ「物語を紡ぐ人」が料理に関しては素人で「参考文献」を元に
自分で食べたいものをこんな料理があったらな~とイメージしまくった描写の方が
意外と読者に「食べてみたい」と思わせるのだと思う。
これが、大きな敗因。
読者は別に「レシピ」を読みたい&知りたいのではなく、物語を読みたいのである。
むしろ料理を知らない人間の方がバッサリ割愛できる分、
物語に重きを置けるのではないかと。


ヒロインの性格、料理描写の分量をもっと見直したら合格点!
そんな感じ。