Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

華麗なる絵魂術師の面倒事 尾嵜橘音

華麗なる絵魂術師の面倒事<華麗なる絵魂術師の面倒事> (メディアワークス文庫)
華麗なる絵魂術師の面倒事<華麗なる絵魂術師の面倒事> (メディアワークス文庫)
KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
2014-11-27
Kindle本

橘音で「きつね」と読むそうです…


さて、ラノベに突っ込みを入れること自体が間違っている!
と言うご指摘を受けそうですが、活字中毒者にとって
ラノベも一般小説も関係なく違和感があったらそこを言わなければ
済まない性格だもんで。
(まあ、めんどくさい性格と言いますね、普通に)


まず、えらく張り切って書いた感があり文体がメチャメチャ硬い!
選びに選んだ言葉を多用されていますが、多分多くのラノベ読者は
そんなことをスルーして「もっと平易な読みやすい文章でよろしく!」
と思っていると思う。
また「絵」を扱っている小説と言うことからからなのかもしくは
作家さん自体が色に興味がある人なのか不明だが、
えらく色の描写が細かいというか普段使わない色を持ち出してきていて
結構ウザイ。


「縹色(はなだいろ)」

瞳は「鷲色」(わしいろ)」

瞳は「翠色(みどり)」


これらの表現がたった読み始め14ページ内でちりばめられている…
縹色ってどんな色?
調べる気にもならなかった…が、今調べたのでとりあえず貼っておきます。


それと「大正」と言う時代設定がイマイチピンとこず、
軍人が出てきたり画学生が出て来たりでその時代それが
どういう位置付けなのかもよくわからないし…


昭和初期に丁寧に作られた時代劇映画のような文体なのに
いきなりスマホやデジタルの腕時計がちらっと見えるような
そんな奇妙な違和感が終始付きまとった感じがして居心地が悪い。



そして究極はやっぱり「サナ」と言う少女の存在。

少女は腰に届くほど長い銀髪を二つに分け、高い位置に結んでいた。

年の頃なら6,7歳。

二重瞼に隠れた瞳は吸い込まれそうなほど澄んだ翠色をしていた。

肌は雪の様に白く透き通り、だからこそ頬や唇の明るさが際立っている。

昭和のバブル時代でさえ髪の毛は黒がほとんどでそれ以外の色をしていたら
「不良!」とさげすまれていたほどなのに
「大正」で銀髪&翠色と言う「外人さんとのあいの子ですか??」と言う疑問を持つ容姿にもかかわらずそこには一切触れられず、出会った先の女子供に「気持ち悪い!!」とも
言われずに普通に溶け込んで遊んでいる描写が何とも…
(ここがラノベたるゆえんなのかもしれないけど…)


ラノベにはこのポイントだけは外してはいけない!的な設定があってこそ
成り立っているのか?と常々思っていた。
ロリコンor,&ツンデレ
髪は長く、ツインテールならなお良し!
エプロン姿orメイドさんをイメージ
メガネキャラ

男のかわいそうな妄想を盛り込まないと話にならんようだな…そんな感じ
そして究極は「ラノベ文体」になればなるほどいい!みたいな。



と言うのも過去に
仲町六絵さんと言う作家の↓

霧こそ闇の (メディアワークス文庫)
霧こそ闇の (メディアワークス文庫)
アスキーメディアワークス

デビュー作が「え?なぜラノベでデビュー?これだったら一般で行けるのに…」
と思ったほど出来が良かった。
けれど、

からくさ図書館来客簿 ~冥官・小野篁と優しい道なしたち~ (メディアワークス文庫)
からくさ図書館来客簿 ~冥官・小野篁と優しい道なしたち~ (メディアワークス文庫)
アスキー・メディアワークス
2013-05-25


このシリーズの当初はデビュー時の硬い文体とラノベ文体が入り混じって
まるで超優等生が無理して不良を演じているがごとく…と言う
痛々しさというか読みにくさが際立っていたけれど、
回を重ねるごとにこなれていって、今ではすっかりラノベ文体を手に入れて
誰が書いたかわからないほど没個性のどこにでもあるラノベの一冊に
成り下がった感が大きい。


デビュー作はまだ本人の「個性」、しいて言えば「書きたい世界観」が
色濃く残っているのに、需要にこたえるためには個を殺し、
ひたすら読んだ途端に内容を忘れる作品をせっせと書くんだよなあ…
気の毒に。
仲町さんの作品も個性があったからこそ今ここに引用できるのであって
それ以外の他の作家なんて「はて?今どんな本を読んでいたっけな?」と
速攻に健忘症に陥ることが多いのに。


この人の作品も次回はどう化けるんでしょうか?
いい意味でラノベ文体を手に入れて人気を得るか、
それとも没個性のどこにでもいる読み捨て作品の多作作家になって行くのでしょうか?


そして題名にある「面倒事」はサナが言ったりしたりしなければ面倒事に
ならなかったことばかりなので「サナの尻拭い始末記」と言う副題をつけるのは
どうでしょうか?(毒)
結構イラつきますよ、このサナのキャラ造形は。