Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

海の見える街 畑野智美

海の見える街 (講談社文庫)
海の見える街 (講談社文庫)
講談社
2015-09-15

この人の本を借りたのは、畠中さんの本を探している時に
同じく「は行」として置いてあったから。笑


表紙のイラストは綺麗だし裏表紙の簡易説明にも好感が持てた。
内容は4編から成り立っている。
ところが読み始めて「…、これ、この調子で続くの…汗」ってぐらい拒否反応大!

と言うのも、一編目。
男。32歳。高台にある図書館の司書。
10年も片想いだった相手が結婚してしまいあえなく失恋。
利用者に怒られるとフリーズしてしまう。典型的草食男。
姉と妹に挟まれていたため女子から男扱いされず、女子にとって気軽に相談できる空気のような男と言えば聞こえがいいがどこか「透明人間」ぽい。
2編目。
初恋が「もーれつアタロウ」の25歳女子。
太宰とホームズが好き。そして一篇目の男を好きになって3年目。
3篇目。
一篇目の男とその片想いの女性と同期の32歳。
仕事はできるが人となんとなく壁がある。
何よりも中学生女子にしか興味がない。
4編目。
図書館に派遣としてやってくる25歳女子。
まあ、常識が無く図書館員を振り回す、振り回す。笑
司書の資格は持っておらず、読書は嫌い。
そして何よりも仕事を教えてもらっていた当初、
予約本のピックアップ時になんと

見つけた本を手裏剣のように籠に投げ入れる。

ふちに当たり、バサッと音を立てて籠の中に落ちる。

ゴールと言って嬉しそうにしているが…以下略



この描写を読んで一瞬でこの女を嫌いになる私。笑
この最初どうしようもない25歳女子が引っ掻き回していくのですが、
ひっかきまわされたからこそ他の3人が「変わって行く」話でもあり、
最終的にこのどうしようもない非常識女が何よりも一番変わって行く話でした。
その変化の描写を4編を通じて読者に理解させて行く書き方。
薄い色のグラディエーションみたいな感じ。
嫌いだった人を最後は「いいやつじゃん!」みたいに思わせるやり方が
若干畠中本で読書に飽きていた私に「ああ、こういう話もあるのね」と
眠気を吹き飛ばしてくれた一冊。


それにしても読みはじめは、
あまりの「草食男」ぶりには開いた口がふさがらないというか
この男のどこに「男としての魅力があるのか??????」と、
世代差をめちゃくちゃ感じましたね!!!!!!!!
これほど積極性も無く、存在感が薄そうな男が今時の主流(30代)
なのかと思うとそりゃ、結婚率も上がりませんわな~と思った次第。