Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

おもちゃ絵芳藤 谷津矢車

おもちゃ絵芳藤
おもちゃ絵芳藤
文藝春秋

表紙のイラストから「国芳??」と思って借りたのですが
実はその「国芳の葬式」から始まり、国芳の弟子だった芳藤が主人公。
しかしですね、芳藤と聞いて「はて?どんな絵を描く人でしたっけ?」
と全く特徴が浮かんでこない。
それもそのはず、本文中で散々この人の絵は「華が無い」とけなされ、
その分「丁寧な絵を心がける」ものの時代は江戸から明治へ。
時代の流れがどんどん変わって行き、上手い!と評価されている人でさえ
生き残れるかどうか不安を抱えて毎日を過ごしている中、
兄弟子や弟弟子が気を利かせて「この仕事はどうだい?」と誘うものの、
「いや…私は…」とすべてを断るのは華が無いというよりも
ああこの人の性格が繊細と言うよりも
大胆さも思い切りの良さも無くただただ決断して変わる勇気が全く無い人の絵、
と言うことなのだなと。
あまりの決断力の無さにもほどがある描写に
「運をつかむのが下手な人の典型」とイライラ。笑
そうこうするうちにあっさり日の目を見ることも無く死亡描写で終了。
多分「死後、日の目を見た絵師、しかも日本人にではなく開国で
浮世絵に興味を持った外国人に評価された人」って感じなんだろうなあ…
と、はっきりした経歴を書かれることなく終了。
あまりの「じみっぷり」な性格の人物を主人公に持ってきても
それこそ生き方に「華が無い」からイマイチ。
そう言う意味では今の時代、たとえ日の目を見るような仕事をしてなくても
コツコツやっていればいつかは…と希望を持たせようとしたのかもしれないが、
華が無い人の話を読んでも楽しくないのでいっそのこと創作人物で
もう少し色を付けて欲しかった。