Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

カカノムモノ 浅葉なつ

カカノムモノ (新潮文庫nex)
カカノムモノ (新潮文庫nex)
新潮社
2017-04-28

『神様の御用人』にて一躍人気作家になった浅葉さんが
ラノベから一般文庫(新潮社ですよ!!!!)に進出!!!
おめでとうございます!

神様の御用人 (6) (メディアワークス文庫)
神様の御用人 (6) (メディアワークス文庫)
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2016-08-25

「御用人」は私も好きなシリーズですが、本作と比べてみると
「御用人」は主人公の「お人よしな性格、善意」に満ち溢れた性格が
あってこそ成り立っている=人気がある のだと思う反面
こちらは「善とも言えず悪とも言えず」と言う感じ。
「悪」と言うか御用人に比べて「陰」なんですねえ…
だからあのシリーズの感覚で読み始めると結構痛い目に遭います。笑


題名の「カカノムモノ」とはカカは「加加」=人間の心に巣食う
嫉妬妬みと言った闇の欲望的な物=穢れ がその人間を喰らい尽くすぐらい
大きくなったもの=大禍津日神(おおまがつひのかみ)を飲み込む者
と言う意味。
呑み込む者=浪崎碧(なみさき あお)の先祖は元々「魚」であり、
魚の身でありながら「陸にあこがれた」結果、
尽くしていた女神の逆鱗に触れ呪いをかけられる。
その呪いこそが「加加」を飲み続けなければ
人間から魚に戻ってしまう」と言うもの。
人間の心の中にある暗い部分なんてすべての人間が宿しているから、
楽勝!と思いがちだがこの場合「大禍津日神」に育ち切っていないものを
飲んでも意味が無い。
嫌なたとえで申し訳ないが「ポリープ」の状態では「切っても仕方ない。
もう少し大きくなるまで(切り取りやすくなるまで置いておきましょう)」
がん細胞が全身に回り「もう、手遅れです」状態になってこそ呑み込める、
と言うわけで主人公はひたすら「手遅れの一歩手前」まで
対象者を観察し続ける。
そこに相手を「救う」と言う気持ちではなく
「自分が魚になることを防ぐため=餌を得る為」の行為でしかない。
また「飲まれた」人間はその欲望がなんであったのか「覚えてない」状態になり
結果、同じことを繰り返す=反省することはない 。
それは完全に「善」になってしまうと「餌」が無くなってしまうからだろうか?
人間が同じ過ちを何度も何度も繰り返すのはこんな風に「生かさず、殺さず」
の状態を「神」が望んでいるからなのだろうか?


とまあ、結構人間の心の闇を扱っているからそれなりに面白かったです。
ちょっとBL要素も加味して「大人向け(?)」を意識しているような。