Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

いいね!ボタンを押す前に ジェンダーから見るネット空間とメディア

いいね! ボタンを押す前に──ジェンダーから見るネット空間とメディア
いいね! ボタンを押す前に──ジェンダーから見るネット空間とメディア
亜紀書房

ネットの「炎上」問題だけでなくさらに「ジェンダー」も絡めた複数の著者で書かれた一冊


【目次】

■小島慶子……私たちはデジタル原始人──序論にかえて

■浜田敬子……眞子さまはなぜここまでバッシングされたのか」

■李美淑………炎上する「萌えキャラ」/「美少女キャラ」を考える

■田中東子……なぜSNSでは冷静に対話できないのか

■治部れんげ・山本恵子・白河桃子……なぜジェンダーでは間違いが起きやすいのか

■林香里………スマホ時代の公共の危機──ジェンダーの視点から考える


■〈特別対談〉君塚直隆×小島慶子……イギリス王室と皇室は何が違うのか?

■〈特別対談〉山口真一×小島慶子……ネット世論は世論ではない

■〈コラム〉石川あさみ……子ども向けアニメーションとジェンダー表現


■浜田敬子……あとがき



03 なぜSNSでは冷静に対話できないのか 田中東子 
p130

つまり、私たちが日々snsで出会う情報は、アルゴリズムによって自分自身の好みに合うものだけに限定されていて、より狭い範囲のものでしかない状態になってるというのである。この「永続的個人化」がなされた情報空間は「フィルターバブル」という言葉を使ってて考えてみると、さらに解析度が上がるかもしれない。

「フィルターバブル」とはアルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、個々の利用者にとっては望むと望まざるにかかわらずアルゴリズムの見せたい情報が優先的に表示され、利用者の観点にあわない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立するという情報環境を示す学術的な言葉である。


似たような現象を導く概念として、「エコーチェンバー」と呼ばれるものもある。

こちらはsnsを利用する際に自分と似た興味関心を持つ利用者ばかりをフォローし続けていくことで、その結果、自分が良いと感じる意見をsnsで発信したときに、自分と似た価値観の意見しか返ってこなくなるという状況を、閉ざされた小さな部屋で音が反響するという物理現象になぞらえた言葉である。

つまり、snsのアカウント越しに接触する情報は、社会全体で共有されているどころか、個別化され、個人化されたものなのである。したがって、私たちがsnsで目にする情報は、個人の感覚からすれば日常的であり、社会のすべてを覆いつくしているかのように感じられるかもしれないが、実際には社会全体で共有されてなどいないし、世界全体を覆いつくすほどの影響力を持つとのとは限らない。




p167 山口真一

重要なのは「ネット世論」は世論ではないという事実を押さえておくことで、それを知っているか知らないかという事だけでも全然違うと思います。