思い出探偵 鏑木蓮
- 思い出探偵
- 著者:鏑木 蓮
- 出版社:PHP研究所
- 発売日:2013-07-17
- カテゴリー:本
出版社をPHPに変更したせいか、作風もそこに見合った風に変化。
元々「江戸川乱歩賞」と言った重たい肩書があって、それに見合った作風、作品しか発表できない土壌があったのかもしれないが、本作のように「人が死なない」(間接的には亡くなっていてそれがトラウマになっている人もいるが…)いわば「日常の謎」をうまくサスペンス風にアレンジしてある。
他の人から見たらただの「ゴミ」程度でしかない認識の物を「大切なもの」として脇によけておいてあげるその優しさをうまく形にしているなあ、と。
P51
「どうしてあのペンダントが大切なものだと思われたのですか。」
「それは中身が、あまりに粗末なものだったからですよ」
「粗末だったから?」
「凡夫の私にはそう見えた。しかし裏を返せばお金では測れない価値があるからペンダントトップにしてあるということです。
お金で測れないとなると、その人の心で計られた価値がある。
心より大事なものは、この世にはありませんから。場合によっては命よりも」
穏やかにけれど各自の心の中にはいろんな葛藤が渦巻いている。
その葛藤を表に出さないように、和を乱さないように。
けれど優しさは時によって一層人を傷つけるものであるのだが…
シリーズになるとしたらここの「お互いの気持ち」がどう変化して処理していくかが問題だなあ…
それにしてもこの人の作風は妙に登場人物が「年を取っている感じがする」んですが…
探偵長(?)の浩二郎にしても45歳。しかし全体から伝わってくる雰囲気がどうも60を超えた定年を迎えた人のように感じる。
本作で出てくる「人探し」にしても皆妙に長生き!(笑)
そんなにうまく次から次へと手掛かりがあるものか???と若干「メルヘン」が入っている気がしないでもないけど読後感がいいから良しとする!
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