Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

思い出をなくした男 鏑木蓮

思い出をなくした男
思い出をなくした男
著者:鏑木 蓮
出版社:PHP研究所
カテゴリー:本

本来なら一人の作家を集中して読む時に、書かれた年代順に読むのですが(その方がその作家の成長ぶりがよくわかるので)今回は先に読んだ『思い出探偵』の続編が借りれたので先に読んだ。(そうしないと前回までの内容とか流れを忘れちゃうので…)


正直、ちょっと残念感ありの読後感。
このシリーズって「その物を通じて、形にならない人の思いやその背景に思いを託す」探偵の話だったのが今回はただのありふれた人探しになっている。
それって、既存の探偵ものとどう違うの?って感じで。
まあしいて言えば、探偵をしている人たちの成長ストーリーとしての側面は持ち合わせているものの
全編になんていうか「嫉妬」とか「エゴ」が満ち満ちており前回のハートウオーミングなテイストとはかなり違う。
とはいえ、ハートウオーミングばかりだと今度は「メルヘン過ぎる」と私みたいに毒吐きが文句をつけるので多少アレンジしたのかもしれないが…


まあこれだけ探偵側が人とまともな人間関係を構築できない人ばかりな上、コマシだった「雄高」君が役者に専念してしまってもうガタガタだし。
心に傷やよこしまな気持ちがある人たちが表面は「仲良しこよしの家族ごっこ」の雰囲気の職場で今後うまくやっていけるかちょっと問題。
特に由美の浩二郎に対する恋心は一悶着として居座るし。
これがドラマ化するとしたらあっさり由美の気持ちはカット!ってなるんだろうなあ…
どこまでもハートウオーミングドラマとして成立させるためにはそんな「ドロドロ感情」を忍ばせるわけにはいかない。
なのでいっそのこと由美に惚れている「茶川」を60代のおっさんから50代のおじさんに変更して、
こちらで恋愛感情が成立するようにした方がきれいだし。
実際この茶川さんの存在なしではこの探偵業何一つとして解決しないと言っていいほどのキーパーソンをいつまでもかわいそうなおっさん状態にしておくのはどうかと。
ドラマだと視聴率を狙って若手俳優を起用してそのフアン層を取り込むとしたら佳菜と真をくっつける展開したらわかりやすいし。
とまあ、原作の人間関係だとちょっと重たすぎてと言うかあまりにも人間味がありすぎて成立しないんですよねえ…


まあ、面白いと言ったら面白いんだけど前作の「優しい字を書く男」だったっけ?一作目が一番個人的には良かったなあ…と思ってます。