Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

マカン・マラン 古内一絵

マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ
マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ
中央公論新社
Digital Ebook Purchas

「マカン・マラン」とはインドネシア語で「夜食」の意
オーナーの昼の仕事であるドレスを作成してくれるお針子の「夜食」を作っているうちに
夜は不定期ながらもカフェとして営業
ただ、そのドレスは「ドラァークイーン」の為のものでありオーナーもまたしかり
とはいえ、週一で通ってくる「元同級生」の男に言わせれば「文武両道加えてハンサム」
さらに「元エリート社員」だった「彼」が「彼女」になったのはある病がきっかけ


そんな「彼女」が作ってくれる料理は「心身共にお疲れ状態」の人にとっては冷えた体を元に戻してくれて元気になって明日からまた「頑張ろう!」と思わせてくれるそんな本当に「温かい」「思いやりに満ちた」品々


こういう小説ってへたすると「おなかすいた」「食べたい」だけの感想になりがちですが、
この一冊は料理の描写以上に「ストーリー」や「設定」がしっかりしていて「小説」として
きちんと成り立っているところが好感が持てた


4篇収録
第一話 春のキャセロール
第二話 金のお米パン
第三話 世界で一番女王なサラダ
第四話 大晦日のアドベントスープ


p53

「もう少し現場に目の利く役員でもいれば、本当に会社を支えてきた中核社員を追い出すことが、どれだけ会社の損失になるかわかりそうなものだけど…。

そういう人は、なまじ仕事ができるから、どこかで責任を取らされて、失脚しちゃってたりするのよね。大きな企業に残るのは、自分が矢面に立つことなく、うまく会社の中を泳ぎ回ってきた政治屋ばかりよ」


この一文を読んだとき、この作者さんも色々な目にあってきたんだろうな…と共感!



p229

この世界は本当に弱肉強食だ。

こうやって、色々なものが強いものにばかり吸い取られる。けれどその片棒を担いでいるのは、どこにでもいる小市民だ。目先の小さな損得を

ちらつかされれば、矜持なんて簡単に売り払う。


こんな風に「ただおいしそうな描写」だけではなく「その人の人生」が反映されてこそ
深みのある小説が出来上がるのだと思う