Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

女子的生活 坂木司

女子的生活 (新潮文庫)
女子的生活 (新潮文庫)
新潮社

え~読み終わっちゃうのかあ~続編読みたいな~と昨日アップした本とは真逆の感想を持った一冊!面白い!!


主人公は生まれた時は「♂」現在も身体は「♂」だけれど気持ちは「♀」そして好きになるタイプも「♀」と正直その感覚が良く分からないのですが「トランスジェンダー」と言うそうです。(個人的には好きになるのは「♀」なんだったらそのまま「♂」で居ても何の問題も無いと思うのですが…相手さえ納得していたら結婚も身体をいじらなくてもできるしね)


普段から女装しており勤め先もブラック企業のアパレルなので仕事させしてくれたらどんな服装でもOK!とある意味恵まれた(?)職場環境。同僚もさばけていて違和感なく溶け込んでいる。(職場運の無かった私から見たら非常にうらやましかった)


ところが「トランスジェンダーあるある」なのだと思うけれどこんな場面は日常茶飯事。


高校の同級生(その頃は普通の「♂」で過ごしていた)が突然下宿にやってきたかと思うと突き詰めると「俺は仕事も何もうまく行っていない。社会が悪い!そうだ俺は悪くない!そういや同級生が女になったってな。どんな化け物になったか見に行ってやろう!」


アイツより俺の方が数倍マシ!と思う優越感(見下し)


もしくは、仕事で契約に行った先で普段は実家暮らしで母親にディスられて小さくなって暮らしている陰の薄い女が別れ際に
「あの~男性ですよね?すごいですね、さすが東京って感じ。
こういうのも、許されるんですね」 とどめに
頑張ってくださいね。母世代の人には絶対に理解できないと思いますけど」



何やら上から目線の言葉を投げつけてくる優越感(見下し)


他にも高収入の男と合コンすることになり、手料理持参!という課題まで押し付けられ
繰り広げられる一見友好的実はその会話の裏に隠されたディスり皮肉・相手を落とす駆け引き…と、私がブログで書いているような誰が読んでもすぐわかる「皮肉・毒」なんてもんが
可愛く見えるほどの巧妙なテク!!!
これをその裏の意味・心理を解説してくれるので「なるほど…ひえ~怖いわ~こういう事だったのか!!!!!!!」と…
(いや~楽に結婚できて良かったよ。こんなの戦えない…無理無理…)


何せ主人公が男であり女でもあるので片方の性しか持たない人間が考えが及ばないことまで事細かく気がついて対処してしまう。(特技ですよね、これ)


こんな風に普段から人を落としてなんぼ!のサバイバル生活をしていたら人間関係もギスギスして当然かあ…
先日の幼稚園ママたちから感じた嫌な雰囲気も、彼女たちがこんな「駆け引き」しまくって相手を落としまくってきた結果手にした男との結婚だったら文字通り「勝ち組」なわけで。そりゃ、「私は勝者よ!!」とばかりに不遜な態度をとっても仕方ないなあ…とか妙にストンと胸に落ちました。


どこかに盗聴器を仕掛けてそのまんま文字起しをしたかのような超読みやすく、一気に作中に引き込まれる文体なので人間の裏を覗ける秀逸本!お勧めします!