Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

月と私と甘い寓話(スイーツ) 野村美月

ストーリーテラーのいる洋菓子店 月と私と甘い寓話
ストーリーテラーのいる洋菓子店 月と私と甘い寓話
ポプラ社

某有名「執事」漫画を彷彿させる執事ならぬ「ストーリーテーラー」と数々のおいしそうなスイーツを生み出す美女パティシエールの話。(本文ではこの人の事を「シェフ」と呼んでいるが…正直違和感大!)


「読書メーター」なら異口同音・付和雷同的に「スイーツが食べたくなった」というコメントの羅列で埋め尽くされる事が想像できる。その人をほめるところが無い時に持ち物をほめるあの感覚で。誉めるところがそこしかない、とも言う。


作者の実体験が伴わないせいか、それこそ見た目は綺麗が味はイマイチ…なスイーツに似たような読後感。読んでいても作者が「これだけは言いたい!」という部分も見当たらず。よって抜粋する材料すら見当たらない。ひたすら「時間つぶしにはちょうどいいが何も残らず」の代表的な一冊。


そもそも一話目の「店内が茶色く見える」というのはアメリカンクッキーの様に「材料を混ぜて焼くだけ」のシンプルなお菓子の事だと思うのだが、実際本文でも『赤毛のアン』のアンのケーキ作りの失敗例を挙げている。(大草原の小さな家のお母さんが作るような家庭菓子とでも言おうか)
それが一転して「お菓子作りが得意&好き」レベルで店を開いた人に(修行したとは到底思えない描写)きらびやかさと繊細さを合わせもつケーキを作れるとは到底思えないのでこのような展開はあまりにも無理がある。


また最後の方にパティシエールの造形描写として「線の細いいかにも女性らしい体つきや性格」が書かれているが私たちが普段ケーキを作るような小麦粉1キロの袋レベルではなく
大袋のはず。いわゆる「担いで」運ぶレベルなのでそのような「華奢」な体つきではとてもとても。素手ならぬ素腕全体を使ってボールの中の材料を混ぜる、といった見た目のきらびやかさとは相反して「体力勝負」の職業である。(よって男性の「パティシエ」が業界の大半を占めるのはこういう理由も大きいと思う)


とまあリアリティの無さ&ご都合主義で最後まで押し通してひたすら「底の浅さ」が漂っているのに、将来ドラマ化かアニメ化の原作に収まることを想定したかのような見た目だけきらびやかな仕上がり。(あとはプロの脚本家に任せた!というところか)
現実との乖離が激しすぎる。エンタメ、と言ってしまえばそれで終わりかもしれないが。
作者にしてみればここまで酷評されたところで「だから~題名に寓話を『スイーツ』って
わざわざ読ませてるでしょ!スイーツ(脳)なの!!スイーツ(脳)!!」って言い逃れしそうですが。


この本を読むくらいなら

読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA)
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早川書房
Digital Ebook Purchas

でも読んだ方がよっぽど有意義な時間を過ごせると思う。


とまあ、もし私が上記の内容を読書感想文にして提出したらあの担任はやはり「間違っている!」と突き返してくるのだろうか?