完パケ! 額賀澪
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単行本の「謝辞」に
この物語の執筆にあたり、今はなき日活芸術学院の皆様に多大なご協力といただきました。
とあるように、舞台は「経営難で閉校が噂される武蔵映像大学」
通称「ムサエイ」の卒業制作の監督の一つの席をめぐってさらにその制作過程を通じての
二人の真逆な性格を持つ青年たちの話
映画を作るのって大変…というのが非常によく伝わるというかよくわかった
「売れない俳優」「売れないミュージシャン」な人たちがこの世にはいますが、
彼らを「現実の、まっとうな生活」に戻れないほどの魅力・魔力を持つ世界に
憑りつかれた結果なんだな、と
現実的なことを言えばこういう人たちが後々「老後2000万なんて無理無理」な
世界にご招待されるんだろうなあ…というか、なんていうか「執念」で「命を削って」
物を作っているから長生きしそうにもないなあ…とか思ったり
実際、主役の一人は叔母さんから「国立大学を中退して、映画専門大学に入るなんて!!
就職はどうなっているの?正社員じゃないの?福利厚生は?お母さんを楽にさせてあげる気はないの!!!」とよくある「世の中の母」が子供を責め立てる言葉で追い詰めます
ところで数年前に某芸術大学の「発表会」?みたいなものを見に行きました(聞きに行きました)
一回生の「合唱」
めちゃくちゃ へたくそ!! でした (^▽^;)
披露前に先生が「彼らをここまでまとめ上げるまで非常に苦労しました」と
腐っても鯛、の芸大生
それが「へた」って何?の世界ですが
一言で言えば
「俺が、私が、この世で一番うまい!!」という虚栄心・自負心・プライド・うぬぼれetc.
で構成された人間が30人近くいて、それぞれが「目立とう!」「アピールしよう!」と
先走っているのがあふれ出すぎていて… (;^_^A
全然「合唱」になってませんでした
協力する、一つになる
という本来の目的なんてま~ったく理解していないという… (^▽^;)
あほだな、としか
この人たちと比較してうちの長男が中学卒業式の最後の最後に全員で歌って退場した後、
学年主任の先生がしみじみと「本当に、彼らは、歌が上手な学年でした!」と
賛辞を贈ってくれた歌の方がよっぽど「うまい」=一つになっていた
と思います(それこそ 本番一発OK! の世界だった)
これが「個」をアピールする場なら目立とう精神があってもおかしくないんですけどね…
「才能」がものを言う世界と一般人が生息する世界は違う
その違いをこれまたその世界に身を置いている人間がさらに
「自分の才能のなさに」打ちのめされていくんですけどね…
p151
そんなことを考え、我に返る。今、何を考えていた?辻井さんの描いた巨大な雨の絵を見つめながら、自分自身に問いかける。でも誰も返事をしてくれなかった。
今にも雨音が聞こえてきそうな辻井さんの絵に、めまいのようなものを覚えた。ここにもいた。ここにも、"切実さ"を作品に変える力を持った奴がいた。
東京中に、日本中に、世界中に、いるのだ。こういう奴が。ままならない現実を生きながら、己の中に深い深い作品世界を構築する人間が。それを自分の手で形あるものに昇華させ、ぬるま湯に浸かってぼんやりと人生を楽しんでいる連中を圧倒する。
僕のような人間を、打ちのめす。
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