Noblesse Oblige  ~ノブレス・オブリージュ~

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい テサロニケ人への第一の手紙5章16節~18節

徴産制 田中兆子

徴産制
徴産制
新潮社

徴兵令、と言うのは強制的に兵役につかされること。
では徴産制とは?
それは一定の基準の男子が女性になって子を産むこと。
さて、国の施策で個人の意思とは関係なく性別変更させられ子を産まされる
この法律に対して…という感じの話。
5人の元男性の話ですが突き詰めると現代の女性の問題でもあり、
さらには日本といういう国の問題でもあり。
LGBTに興味ある人は一読を。


とまあ、本自体の感想はサラッと流しまして、それ以上にこの本の設定が
新型コロナの今の状況と似すぎていてそっちの方が興味深かった。
というのも本作「2018年3月」発行なのですが


p61~

今から6年前の2087年日本で今迄にない悪性新型インフルエンザが発生した。

スミダインフルエンザと呼ばれたこの疫病は女性のみ発症し、り患患者の大半は十代から四十代しかも若年層ほど死亡率が高かった。日本は一時的な鎖国状態に置かれ、世界的なパンデミックは免れたもののアメリカを始めとする数か国で感染が確認された。

日本政府はワクチン開発を全面支援し、その開発と特許取得に成功したが、三年後にスミダインフルエンザ終息宣言が出された時点で、亡くなった日本女性は二百十九万人。

十代の女性の九割、二十代女性の八割が、日本から消えた。

若年女性人口の激減により日本の高齢化と減少はさらに危機的な状況となった。

スミダインフルエンザの恐怖は尾を引き、移民も増える気配が無い。

一方、万能細胞を利用した新薬の開発に成功したロシア系日本人医学者によって創設された大学の研究所が画期的な性転換技術の開発に成功した。

大掛かりな外科手術をすることなく、可逆的に性別を変えることができるのである。

男性研究者が女性へ性転換し、妊娠と出産に成功、赤ん坊が元気に育っていることが発表された。そして91年の3月、自由党のソガ首相は国民に向けて会見を行った。

日本国籍を有する満十八歳以上、三十一歳に満たない男子全てに、最大二十四か月間「女」になる義務を課すという「徴産制」の提案だった。


「ソガ首相」だし、
p159

にもかかわらず、ミヤザキ地区の山間にあるこの町では、スミダインフルエンザが大流行することは無く死者も出なかった。

それは当時95歳だった町長が、原因不明の流行り病のニュースを聞いて町民の移動制限を決めたからだ。亀の甲より年の功、街の衰退の象徴の様に言われていた日本最高高齢町長は、約70年前、世界的に流行したエボラ出血熱の事を覚えていた。

その感染拡大原因の一つに「人の移動」があったのを思い出した町長は、周囲の反対を押し切ってすぐさま移動制限令を発令したのである。




作家の頭の中では今回のコロナの感染拡大の原因等がわかっていたのに
日本の政治家の頭には自分たちの私利私欲・利権ばかりが先行して
拡大した、ってことですよね?
近未来の話なのにかなり「今」とオーバーラップする部分がありました。
ある意味「未来書」みたいで怖かったです。